健康被害は「直接吸っている」人だけでなく「吸わない人」にまで拡大!
病気だけでなく、骨粗鬆症や骨折リスク、免疫機能にも悪影響が!?
「タバコ」とは南米地域に自生するナス科の植物を加工した嗜好品。その起源は古く7~8世紀の古代マヤ文明からと考えられています。当初は南米地域を中心に治療や儀式・占いなどで使用されていたようですが、徐々に嗜好品として愛用されるように。15世紀にコロンブスが南米を訪れたことによって「タバコ」はヨーロッパ各地に広まり、世界各地に「喫煙習慣」が広まったと言われています。
日本には遅くとも江戸時代に伝来したと言われている「タバコ」。「タバコ」には私たちが一般的によく目にする紙巻タイプの他、葉巻、パイプタイプ、最近では「タバコ葉」を燃焼させず、加熱する「加熱タバコ」や「電子タバコ」などさまざまな種類があり、嗜好品として楽しませてくれますが、一方で「タバコ」に含まれるニコチンやタールなどによる健康被害が問題になり、世界中で「禁煙」の動きが高まっています。
「タバコ」イコール体に悪いというイメージがありますが、一体何が悪いのでしょうか?
まずは「喫煙者本人(能動喫煙)」の健康被害について。2016年に出された「喫煙の健康影響に関する検討会報告書」には「タバコ」と疾患の因果関係を4段階で公開しています。それによると因果関係を推定する証拠が十分(確実)のレベル1として、
がん(肺、口腔・咽頭、喉頭、鼻腔・副鼻腔、食道、胃、肝、膵、膀胱、子宮頸部)
虚血性心疾患、脳卒中、腹部大動脈瘤、末梢動脈硬化症
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸機能低下、結核による死亡、Ⅱ型糖尿病、歯周病
妊婦の喫煙による乳幼児突然死症候群(SIDS)、早産、低出生体重・胎児発育遅延
などがあげられています。
直接病気の原因となるだけでなく、喫煙は「骨密度の低下」を招くため「骨粗鬆症」や「骨折」のリスクを高めることも!また免疫機能を低下させるので感染症にかかりやすくなったり、重症化しやすくなるとも言われています。
そして、近年、世界的に問題となっているのが、「タバコを吸わないのにタバコの煙を吸ってしまう受動喫煙者の健康被害」。「タバコ」の煙にはタバコを吸う人が直接吸い込む「主流煙」とタバコの先から出る「副流煙」があります。
「主流煙」は燃焼温度が高い部分で発生するので、有害物資が分解されやすいと言われていますが、「副流煙」は燃焼温度が低いため、有害物質が分解されず、「主流煙」よりも濃度が高い状態で含まれています。受動喫煙はこの有害物質が多い「副流煙」を吸い込むため、能動喫煙よりも健康リスクが高いと考えられています。こちらも最近では科学的分析が進み、受動喫煙と疾病の因果関係を推定する証拠が十分(確実)のレベル1として
≪成人の場合≫
肺がん、虚血性心疾患、脳卒中、臭気・鼻への刺激感
≪小児の場合≫
乳幼児突然死症候群(SIDS)、喘息など呼吸器系の疾患
のリスクがあることがわかっています。
国立がん研究センターによると年間約15,000人の方が「受動喫煙」が原因で死亡していると発表するなど、深刻な問題に…。2020年4月から屋内は原則禁煙となるなど、受動喫煙を防ぐ対策が本格化していますが、家族などに喫煙者がいる場合は完全に防ぐことが難しいため、さらなる取り組みが求められています。
■禁煙は「自分」だけでは難しい場合も!家族や周囲、医師のサポートを借りるのが◎
自分だけでなく、家族やまわりの大切な方の健康まで脅かしてしまう「タバコの健康被害」。
長く自分らしい人生を楽しむためにも本数を減らしたり、「禁煙」をすることが望ましいですが、「意志」だけではやめることができないのが実情。近頃は喫煙を単なる「習慣」ではなく「ニコチン依存症」、つまり「病気」と考えるようになり、医師の診察のもとに治療していくものとなりました。
現在17,200(2020年9月時点)を超える医療機関で禁煙治療が保険適用で受診でき、2020年11月には医師が処方する禁煙治療用のスマートフォンアプリが保険適用されるなどさまざまな支援が受けられるようになっており、「自分だけでは無理」という方は是非活用すると良いでしょう。
医師に相談する前に「自分で何とかしたい」「家族に禁煙をさせたい」という方に是非実践して欲しいのが、こちら!まず「禁煙する前」にやって欲しいこととして
・禁煙開始日を設定する…「この日」と決めることで禁煙への意識を高めます。
・禁煙する理由を書く…挫折しそうな時に見ることで初心に戻らせてくれる効果が!
・周囲の人に禁煙宣言をする…周りの協力も得ることでより「禁煙しやすい」環境に
・喫煙行動を見直し、吸いたくなった時の対処法を考えておく…食後吸っていた人はかわりに「歯磨きをする」、コーヒーを飲んだ後に吸っていた人は「コーヒーをやめ紅茶にする」など吸いたくなった時の対処法をあらかじめ考えておくと◎
この4つを実践するとその後の「禁煙」チャレンジがスムーズにいくと言われています。
そしていよいよ「禁煙」チャレンジ!
1.本数を減らすのではなく、きっぱりやめる
2.禁煙の離脱症状(禁断症状)を何とか乗り越える
3.吸わなかった自分をほめてあげる
4.「タバコ」をやめて良かった、良くなったことを探す
5.挫折を恐れない!あきらめず再チャレンジすれば◎
を実践すると良いでしょう。
まずは1。「一度にやめるなんて無理」と挫けてしまいそうですが、実は禁煙を成功させるコツは「本数を減らす・軽いタバコにかえる」ではなく、スパッとやめる方が成功率は高いと言われています。徐々に…では体への効果も感じにくいだけでなく、ニコチン切れによる離脱症状がいつまでも続くことになるため、挫折しやすくなるようです。
ニコチン切れによる離脱症状については「喫煙に対する猛烈な欲求」「イライラ」「眠気」「頭痛」「だるさ」などがありますが、禁煙開始後2~3日がピーク!長くても10~14日と言われているので、吸いたくなったら禁煙前に決めていた「歯を磨く」などの対処法を実践するなどして離脱症状を乗り越えましょう!そして「頑張っている自分をほめてあげる」ことも大切。合わせて「タバコを吸わなくなったら呼吸が前よりラクになった」「タバコを吸わなくなってこれだけお金が浮いた」など、禁煙を始めて「良くなった」ことを積極的に見つけていきましょう!
実際、禁煙をすると12時間で血液中の一酸化炭素濃度が正常に、2~3週間で心機能が改善・肺機能が回復、1~9ヶ月で咳や息切れ・疲れやすさが改善されることがわかっているので、「体の変化」をこまめにチェックすると良いでしょう。
さらに、最も重要なのが「挫折を恐れないこと」。一度でやめることが望ましいですが、もし吸ってしまっても、あきらめずチャレンジを続けることが大切!
家族や周りの方も「頑張っている時はほめる」、「たとえ失敗しても責めずに大目に見てあげる」など、禁煙を孤独な作業にせず、共に頑張っているというスタンスでサポートしてあげると禁煙成功につながっていきます!
最後に、禁煙を頑張り続けるためには「体が元気」であることが重要ですが、喫煙者は「タバコ」によってビタミンCが体内から失われやすく、かつ吸収しにくくなるため、体に必要なビタミンCが不足しがちと言われています。
喫煙の本数、体質にもよりますが、喫煙者は非喫煙者の2倍量程度のビタミンCを摂取することが望ましいというデータもあります。一方、受動喫煙者もビタミンCが失われやすくなると言われているため、家族に喫煙者がいる場合はビタミンの摂取を心がけましょう。
ビタミンCを多く含む食材にはブロッコリー、ピーマン、トマトなど緑黄色野菜やイチゴ、キウイなどがありますが、今の時期におすすめなのが「新じゃが」。じゃがいも自体にもビタミンCが多く含まれますが、収穫されてすぐに出荷される新じゃがは通常出回っているじゃがいもに比べて約4倍ほど含有量が多いと言われています。
ビタミンCは皮にも含まれていますが、皮が柔らかい新じゃがなら皮ごと食べることができるので効率よく成分を摂ることができるので◎です。
さて、ここでクエスチョン!
5月31日はWHOが定めた「世界禁煙デー」です。「タバコ」はガン発症の原因の1つと考えられていますが、タバコに含まれる「発ガン性物質の数」として正しいのは下の3つのうちどれでしょうか?
〈1〉約5種類
〈2〉約38種類
〈3〉約70種類
正解は…
日本で販売されているタバコのほとんどが「紙巻タバコ」ですが、研究などにより紙巻タバコの煙には約5,300種類の化学物質が含まれていることがわかっています。
そのうち現時点で「発ガン性がある」と報告されている化学物質はニコチン、タール、一酸化炭素など約70種類ほど。発ガン性物質は喫煙により肺に達し、血液を通じて全身の臓器に運ばれることにより、ガン発生のリスクが高くなると考えられています。
また大気汚染などで「PM2.5」の健康リスクが問題となっていますが、実はタバコの煙も「PM2.5」。「PM2.5」とは大気中に浮遊する粒子のうち、大きさが2.5μm以下の微粒子状物質のこと。あまりに小さいため、肺の奥深くまで入り込みやすく、肺だけでなく全身に炎症を引き起こすと言われています。タバコの煙による「PM2.5」の被害はタバコの煙を吸った受動喫煙者の体にも悪影響を与えると言われているので注意が必要です。