「ウイルス」や「菌」が付着したら必ず「発症」するわけではない!
「感染症」を発症させる「感染の3要素」とは?
「感染症」とは、私たちを取り巻く空気、水、土壌、人を含む動物に存在する「病原体」が体内に侵入することで、発症する病気のこと。「病原体」は人間の体内に侵入すると、発熱、腹痛、嘔吐などさまざまな症状を引き起こしますが、鼻汁や唾液、便、痰などとともに体外へ排出。別の人間の体内に入り込んで増殖を繰り返すことで感染を拡大させると考えられています。
「感染症」を引き起こす「病原体」は「ウイルス」、「細菌」、「真菌(カビ)」の3種類。どの「病原体」が侵入するかで発症する病気も異なってきますが、「ウイルス」と「細菌」「真菌」には大きな違いがあると言われています。
まずは「大きさ」。いずれの「病原体」も肉眼では見えないほど小さいですが、「細菌・真菌」は光学顕微鏡で見えるのに対し、「ウイルス」は光学顕微鏡でも見ることができず、さらに専門的で特殊な顕微鏡でしか見ることができないほど小さいことがわかっています。そして最も大きな違いは「増殖方法」。「細菌・真菌」は細胞壁や細胞膜などで構成された「細胞」なので、自身で「細胞分裂」をして増えていきますが、「ウイルス」は細胞膜などを持たない単純な構造のため、「ウイルス」単独では増殖することができません。人間の体内に侵入し、その機能を活用することで増えていくと考えられています。
具体的に発症する病気は
【ウイルス】
新型コロナウイルス、インフルエンザ、風邪症候群、感染性胃腸炎(ノロウイルス)、帯状疱疹、麻疹、風疹、水痘、エイズ、肝炎など
【細菌】
感染性胃腸炎(大腸菌)、結核、破傷風、中耳炎、外耳炎、敗血症など
【真菌(カビ)】
水虫(白癬)、カンジダ症など
があります。
いずれの「病原体」にも注意が必要ですが、とくに「ウイルス」が原因となる「感染症」は気温が下がり、湿度が低くなると、活性化する期間が長くなると言われています。また、外気が乾燥することで、ウイルスを含んだ飛沫の水分が失われ、空気中に浮遊しやすくなるため、冬の間は「ウイルス」を寄せ付けないことが大切です!
新型コロナウイルスやインフルエンザなどの影響で、「ウイルス」は感染力が強いというイメージがあるため、「ウイルス」や「菌」が付着したらすぐに感染・発症すると思いがちですが、すべての人が病気を発症するというわけではありません。
では、どうなると症状が出てしまうのか?
最近の研究では「感染源」「感染経路」「宿主(感受性宿主)」、いわゆる「感染3要素」が揃うと「感染症」を発症すると言われています。
「感染源」とは「ウイルス」「細菌」「真菌」などの病原体、「感染経路」はこれらの病原体が体内に入ってくる経路のことを言います。「宿主(感受性宿主ともいう)」とは年齢、基礎疾患の有無、生活習慣の乱れ、ワクチン接種の有無などさまざまな要因で「免疫力」が低下し、感染しやすい人のことを指します。つまり「感染症」はどれか1つだけで発生するのではなく、「感染源」が「感染経路」をたどり、免疫力が低い「宿主」の体内に入り込むことで発症するのです。
現時点でわかっている主な「感染経路」には接触、飛沫、空気、経口感染があります。
各「感染経路」の特長は
【接触感染】
病原体が付いた手で鼻や口を触ることで病原体が体内に侵入すること。ノロウイルスなどは感染している人の便・嘔吐物に触れることで感染します。
【飛沫感染】
感染者が咳やくしゃみ、会話をした際、飛び散った病原体を含んだ唾液などを吸いこむことで病原体が体内に侵入すること。
【空気感染】
空気中に浮遊する病原体を吸い込むことで体内に侵入すること。結核菌、麻疹ウイルスなどは、感染している人の飛沫から水分が蒸発した後も、微粒子となって空気中を漂い、感染させることがわかっています。
【経口感染】
ノロウイルスやロタウイルスなど、病原体が付着した食品や感染者の手指を介した病原体が付着した食品を食べたりして、体内に侵入すること。
これからの季節、最も注意したい新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスは主に「接触」「飛沫」感染で拡大することがわかっているので要注意です!
■「適度な運動」は免疫力UPに◎!「口腔ケア」は「舌」のケアまでしっかりと!
「ウイルス」や「菌」による「感染症」は「持ち込まない」「持ち出さない」「拡げない」が対策の基本と考えられています。けれども、「感染源」となる「ウイルス」などは数多くあり、それぞれ適切な対応をとらないと感染を防ぐことができません。そこで最近では「感染経路」に合わせた対策をとることが重要だとしています。
まずは「接触感染」。こちらは手洗い・消毒、ドアノブ・手すりなどよく接触する物の消毒・洗浄が効果的。「飛沫感染」についてはマスクの着用、3密にならない、手洗いの対策を。
「空気感染」はマスクの着用、換気、湿度の管理、感染者(感染の可能性がある人)の隔離、ワクチンの接種も感染対策に有効と言われています。「経口感染」には手洗い・消毒、食品を十分に加熱すること、調理器具などの消毒・殺菌を行うと良いでしょう。
このように、適切な対策をすることが重要ですが、薬についても同様!
新型コロナウイルスの感染拡大以降、余計な外出をしたくないという思いから、発熱や体調不良があった際、自宅の常備薬を飲んで対応したという方も多いようですが、薬には「ウイルス」に効くもの、「細菌・カビ(真菌)」に効くものがあるので自己判断で薬を飲むことは非常に危険!一般的には「ウイルス」が原因の場合は抗ウイルス薬や対処療法の解熱剤、「細菌」には抗生物質などの抗菌薬、真菌には抗真菌薬を処方します。
自己判断での飲用は症状を悪化させたり、薬が効かなくなる菌(薬剤耐性菌)が増殖することもあるので絶対に控え、医師の診断を受けましょう!!
また「感染の3要素」にあった「宿主(感受性宿主)」にならないよう「免疫力を低下させない」「感染症にかかりにくい体」を作ることが大切!具体的には
1.睡眠時間、休息をしっかりと取る
2.バランスのよい食生活
3.適度な運動を続ける
4.ストレスを溜めない
5.口腔ケアを実践する
ことが大切!どれも基本的な健康習慣ですが、3の「適度な運動習慣」は免疫力UPに◎。
体温が1度上がると代謝が上がり、免疫細胞の活性が高まると言われています。一方、運動を頑張りすぎて体に負担をかけてしまうとかえって免疫細胞の活性を妨げてしまうため、無理をしすぎないようにしましょう。
また、5の「口腔ケア」についても最近では「感染対策に有効」として注目を集めています。「ウイルス」は口や鼻、目などから侵入しますが、「口」は最も大きく、感染経路になりやすいため、歯磨きやうがいなどをこまめに行い、清潔にすることが大切!さらに舌に付着する白い苔状の「舌苔(ぜったい)」が「ウイルス」の働きを助けるなど、感染リスクを高めると考えられているため、うがい薬でケアするなど対策をすると良いでしょう。
「ウイルス」については具体的な症状が出ていなくても、他の人に「ウイルス」を感染させることがあるので注意が必要!新型コロナウイルスの場合、感染してから症状が出るまでの時間は平均5~6日。とくに他人にうつす可能性が高いのは発症する前の1~2日からといわれています。
感染症がピークを迎える冬は「発症していなくても自分がウイルスに感染しているかもしれない」という危機感を持ち、行動することが大切。まわりに新型コロナウイルスやインフルエンザ、ノロウイルスなどを発症した方がいれば自分も他人との接触をできるだけ控えるよう配慮をしましょう。
また、発熱、咳、鼻水、喉の痛みなど具体的な症状が出ていなくても「いつもよりダルい」「違和感を感じる」など少しでも「変化」があれば、予定を変更し、自宅で静養につとめるなど、早めの対策をとることが◎です。
「感染症にかかりにくい体」にするには「免疫力を低下させない」ことが大切ですが、新型コロナウイルスの感染拡大で生活様式が変わったため、性別・年代に関わらず、「低栄養」になる方が増えていると言われています。
外出や運動をしないことで食事の摂取量自体が減っている方もいるようですが、運動不足による肥満を気にして体のエネルギー源となる米やパン、麺などの主食を控える方も多いとか。
体の土台となるエネルギー源が不足すると「免疫力」低下にもつながるため、主食を積極的に摂る方がよいですが、たくさん食べられない、糖質が気になるという方は「イモ類」がGOOD。とくに「さといも」は煮物にしたり、お鍋の具材など「追加の1品」として加えやすいのが魅力!
米やパンは大好きだけど「糖質が気になる」という方は「糖の吸収を抑える」サプリメントなども活用しつつ、上手にエネルギー補給をすると良いでしょう。
さて、ここでクエスチョン!
冬は「ウイルス」による感染症がピークを迎える時期。「ウイルス」は物などに付着するとある程度の期間、残存すると言われていますが、下の3つのうち「新型コロナウイルス」の残存期間が最も長いものはどれでしょうか?
〈1〉段ボール
〈2〉銅
〈3〉プラスチック
正解は…
付着量や条件(気温や湿度、空間の広さなど)によって誤差はあるかと思いますが、最近の研究では「新型コロナウイルス」の場合、銅の表面で4~8時間程度、段ボールでは24時間、プラスチックやステンレス素材では48~72時間後まで残存すると考えられています。
必要以上に神経質になることはありませんが、自分が何気なく触れているものに「ウイルス」が付着していることがあるので、こまめに手洗い・アルコール消毒などをすることが◎!
また頻繁に触る「スマートフォン」の表面を洗浄することも「新型コロナウイルス対策」には有効と言われています。
精密機械のため、強い薬剤を使用すると色落ちや機種トラブルなどが起きることがありますが、家庭用の除菌シートで表面をサッと拭くだけでもGOOD。
メーカーや機種によって洗浄の際の注意点が異なる場合があるので、洗浄をする前に自分の使っているメーカーのサイトなどを念のため、確認してから実践するとよいでしょう。