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「体質」と考える人が多く、一度発症すると「完治」しにくい?!
「病気」をしっかりと理解し、セルフチェックで「早期発見」を

「過敏性腸症候群」とは腸が精神的ストレスや自律神経失調などの刺激に対して過敏な状態になり、便通異常を起こす病気のこと。
通常の検査では腸に炎症や潰瘍といった異常がないにも関わらず、慢性的に腹部の膨張感や腹痛が起こったり、下痢や便秘などの症状が出ると言われています。
原因については諸説あり、まだ解明されていませんが、ストレスや食生活、生活習慣などの影響で発症すると考えられています。

ひとくちに「過敏性腸症候群」と言ってもその症状はさまざま!大きく分けて「下痢型」「便秘型」「交代型」「分類不能型」の4つのタイプがあると言われています。

【下痢型】
・緊張や不安があると便意を催し、激しい下痢の症状があらわれる。
・突然激しい腹痛や便意を感じ、柔らかい便や水のような便を排泄する
・排便後は症状が一時的に治まるが、1日に複数回症状を起こすことが多い
・便意が強いのに十分に排便できず、残便感が残ることが多い
・緊張や不安が原因のため、「神経性下痢」と呼ばれることも
・男性に多いタイプ

【便秘型】
・腸が痙攣を起こすことで便の排出がうまくいかず、腹痛や腹部膨満感を感じる
・なかなか排便できない、出てもコロコロしたウサギのフンのような便しか出てこない
・ガス(おなら)が多く、臭いが強いガスが頻繁に出る
・排便時に強くいきむことが多いため、切れ痔やイボ痔になることも
・女性に多いタイプ

【交代型】
・腹痛や腹部の不快感とともに下痢と便秘を数日毎に繰り返す。
・下痢が2週間続いた後、便秘が5日間続くなど、下痢と便秘のサイクルは一定ではない
・「下痢」と「便秘」、異なった症状を発症するため、「混合型」と呼ばれることも
・最近は男女問わず、この「交代型」の患者が増えている

【分類不能型】
・急に便などが漏れてしまうなど、「下痢」「便秘」「交代」型にあてはまらない症状が出る

といった特長があります。

このようにさまざまな症状が出る「過敏性腸症候群」ですが、検査などで重篤な結果が出るわけでなく、専門的な治療をすることもなかったことから以前は「お腹が弱い」など「体質的な問題」としてあまり話題にされませんでした。が、近年、「日常生活に支障をきたすほど深刻化する」人や「発症年齢の低年齢化」などもあり、注目されることに。
とくに最近は「働き盛りの方」の患者が急増!また、受験や学校生活のストレスから思春期の「中高生・小学生」が発症することも多く、問題となっています。

「過敏性腸症候群」の特長として「突然起きる・何度も起きる」ことから、ここぞという時の不調で仕事に影響を与えたり、「いつお腹が痛くなるか?」という不安で「精神面」でダメージを受ける方が多いと言われています。
また、吐き気や疲労感、肩こり、頭痛、めまいなど、全身症状を訴える方もあり、「早期発見・早期対策」が重要と考えられるようになりました。
しかしながら、「過敏性腸症候群」という病名がまだ一般的ではないこと。症状があっても「一時的なもの・いつものこと・体質だから」と我慢をし、市販の胃腸薬などで対応することから、自分が「過敏性腸症候群」と気づく方が少なく、早期発見が難しいことも!
そこで簡単にできるセルフチェックをご紹介。

・1ヶ月ほどお腹の調子が気になる、もしくは痛みがある
・下痢や便秘、もしくはその両方が続いている
・便が出てもコロコロした硬い便しか出ない
・便の形が悪い状態が1ヶ月ほど続いている
・排便をすると痛みが一時的に和らぐ
・排便の回数が不規則
・排便してもスッキリしない・残便感がある

上の7つのうち、2つ以上あてはまる場合は「過敏性腸症候群」の可能性が!軽度の場合は「生活習慣の見直し」などである程度は改善できると言われていますが、自己判断をせず、とくに「症状が頻繁に起こって不安・日常生活に支障をきたす」といった方は早めに医師の相談を受けると良いでしょう。

■「腸に刺激を与えない」「ストレスを溜めない」ことが対策のカギ!

「過敏性腸症候群」については原因が定かでないこと、また「再発」しやすい病気と言われていることから「完治」させることは難しいとも言われています。
しかしながら、軽度の場合は「生活習慣の見直し」で、症状が進んでしまっても医師の診断の元で適切な「薬物療法」を行うことで症状を大幅に改善させたり、「病気」とうまくつきあいながら、日常生活をスムーズに送ることは可能に!
そこで、「過敏性腸症候群」に「ならない」「悪化させない」「再発させない」ための対策法として

1.栄養バランスを考えた食事を朝昼晩、できるだけ同じ時間帯に摂ることを心がける
2.暴飲暴食を避ける
3.刺激の強い香辛料やカフェイン、アルコールはできるだけ控える
4.軽い運動をできるだけ毎日実践する
5.毎日、湯船につかり、入浴をして心身ともにリラックスさせる
6.十分な休息と睡眠を取ることを心がける
7.趣味などの時間を作ってストレス解消を心がける
8.出勤・登校など、外出前にトイレに行く時間をしっかり確保する

を実践すると良いでしょう。
「過敏性腸症候群」は「腸」の内臓神経が何らかの原因で過敏になっていることで発症すると言われているため、「腸」に過度な刺激をかけないよう1~3のように「食生活」を見直してみましょう。
また「ストレス」をかけないことも重要なので、「軽めの運動」「入浴」「睡眠」で心身ともにリラックスさせることが◎。
さらに「外出前は必ずトイレに行く」など、家での排便時間をしっかり取ることで不安が軽減し、症状が改善に向かうケースも多いため、便意がなくても外出前はトイレに行くと良いでしょう。

「過敏性腸症候群」の対策・予防には「規則正しい食生活」を送ることがポイントですが、欧米では高FODMAPの食品を控えることで改善したとして注目を集めています。
「FODMAP(フォドマップ)」とはFermentable(発酵性の)Oligosaccharides(オリゴ糖)、Disaccharides(二糖類)、Monosaccharides(単糖類)、Polyols(ポリオール)の頭文字から名付けられた糖類のこと(Aはandという意味)。 「オリゴ糖」などは体に良い影響を与える栄養成分として知られていますが、「FODMAP」は小腸で吸収されにくく、大腸で発酵しやすい特長があるため、これらを多く含む「高FODMAP」食品を摂り過ぎてしまうとお腹が張りやすくなる、下痢になるといった症状が出ることがあると言われています。
一般的に小麦、タマネギ、大豆(納豆)、ひよこ豆などの豆類、ニンニク、牛乳、ヨーグルト、蜂密、リンゴ、モモ、人工甘味料(ソルビトール、キシリトール)などが「FODMAP」を多く含む食品に分類されています。

とはいえ、高FODMAP食品は納豆やヨーグルトなど健康に良いと言われる食品も多く、症状を改善したいから…と言ってこれらの食材を「一切食べない」など極端な食生活を送るのはNG!
基本はあくまでも「バランス良く」なので、お腹の調子が気になる時は控えめにする…など工夫をすると良いでしょう。
一方、低FODMAPの食品と言われているのが米、玄米、ホウレンソウ、トマト、ニンジン、ナス、肉類、魚介類、バナナ、イチゴ、バターなどなど…。「偏る」ことはNGなのでこちらも「バランス良く」摂りたいものですが、冬場は「木綿豆腐」がおすすめ!「豆腐」は絹ごし豆腐にはFODMAPの1つであるオリゴ糖が多く含まれていると言われていますが、木綿豆腐は製造の過程でオリゴ糖が失われているため、絹ごし豆腐よりも含有量が少ないと考えられています。
さらに「木綿豆腐」は鍋や煮物などに取りいれやすいため、たくさんの食材をバランス良く摂りたいという方にも◎。「過敏性腸症候群」は原因がわからないこともあり、FODMAP食品という考え方があっても食材の合う・合わないはかなり個人差があるため、これを食べたらおなかの調子が悪くなったということがあれば控えめにするなど、「食事を楽しみながら」自分に合う食材を見つけていくと良いでしょう。

さて、ここでクエスチョン!

新たな現代病として注目されている「過敏性腸症候群」。
ストレスや自律神経の失調が原因で「腸」が異常を起こす病気と言われていますが、「腸」について述べたもので正しいものは3つのうちどれでしょうか?

〈1〉大腸と小腸では「大腸」の方が2倍ほど長い
〈2〉大腸で「栄養素」を吸収、「小腸」では水分を吸収する
〈3〉「腸内フローラ」は「大腸」「小腸」どちらにも存在する

人間の腸には「小腸」と「大腸」があります。言葉のイメージから「大腸」の方が長い、大きいと思いがちですが、成人の方の「大腸」が全長約1.5~2mに対し、「小腸」は約6mほどと「小腸」の方が圧倒的に長いことがわかっています。

どちらも「消化器官」として重要役割を果たしていますが、摂取した食物は「小腸」で栄養分を消化・吸収、大腸で水分などを吸収し、便にした後、排出されます。最近では「免疫力アップ」にも重要な器官であることがわかり、腸の健康を左右する「腸内細菌」が注目されていますが、「大腸」も「小腸」にも1,000種類、100兆個以上とも言われる菌が棲みついていると言われています。

これの腸内細菌は菌種ごとに塊となって腸の壁に張りついており、その状態がお花畑のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれるようになったそう。正式名は「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」と言います。

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