「自覚症状が出た」時は
かなり進行している可能性が?!
「毎年の健康診断」&
「日々のセルフチェック」で
早期発見&対策を
「慢性腎臓病」とは1つの病気を指すのではなく、腎機能が低下することで起きるさまざまな腎臓の病気の総称のこと。
厚生労働省のe-ヘルスネットによると「腎機能が慢性的に低下したり、尿たんぱくが継続して出る状態」とされています。「Chronic Kidney Disease」の頭文字を取り、「CKD」と呼ばれることもあります。
腎臓と言えば、尿を作り、体に不要な老廃物を排出する器官として知られていますが、「排出」だけでなく、腎臓に流れ込んできた血液をろ過し、たんぱく質や糖分など「体に必要な成分を体内に戻す」、「血液を作り出すホルモンの分泌」、「塩分と水分の排出量をコントロールし、血圧を調整する」など生命活動を維持する上で大切な働きをしています。
その働きが低下してしまうと体に必要なたんぱく質などが尿で排出されてしまったり、逆に排出しなければいけない老廃物が体内に残ってしまうなど、全身にさまざまな健康被害を引き起こすと言われています。
一般的に腎臓の働きが健康な人の60%以下に低下(腎機能を示すGFRが1分間に60ml未満の状態)、尿の中に体に吸収されるべきである「たんぱく質が排出されている状態(尿たんぱく陽性)」が3か月以上続いた場合、「慢性腎臓病」と診断されます。
「慢性腎臓病」は初期の頃は全く自覚症状がなく、症状が進行すると「だるさ」「むくみ」「貧血」「息切れ」といった全身症状が現れると言われていますが、これらの症状についてもただちに日常生活に支障をきたすほどではないため、そのまま放置する方も!
しかし、「だるさ」などの症状が出ている時点で実はかなり腎機能は低下しており、何もしないでいると腎臓が機能しなくなる「末期腎不全」の状態になり、人工透析や腎臓移植が必要になるケースもあります。
また、腎機能が低下すると動脈硬化が進むと言われ、「脳卒中」や「心筋梗塞」など、死に直結する病気を発症しやすくなるため、決して侮ってはいけません!
「慢性腎臓病」はメタボリックシンドロームや糖尿病、高血圧気味の方がかかりやすいと言われていますが、「生活習慣の乱れ」が原因とも言われているため、年齢・性別を問わず「慢性腎臓病」になるリスクがあると考えられています。
腎臓のトラブルは初期の段階で適切な対処をすれば、回復しますが、ダメージが進んでしまうと完全に治癒することは困難と言われています。まずは毎年受ける健康診断で「尿たんぱくが陽性」でないか?必ず確認しましょう。
「陽性」になった方はすぐに再検査などを受け、対策をする方が良いですが、「症状が出にくい」と言われる初期の「慢性腎臓病」の発見を助けるセルフチェックをご紹介。
1.尿の色が白く濁っている
2.尿が泡立っている感じがある
3.尿の色が赤い・赤黒い感じがある
4.尿のニオイが以前よりキツクなった
5.尿の量が以前より増えている・
以前より減っている
6.夜中に何度もトイレに行く
7.疲れやすい・疲れがとれない
8.指輪や靴下、靴がキツク感じる・
顔やまぶたがむくんでいる
9.顔色が悪いと言われた
10.息切れすることが増えた
1つでもあてはまる方は医師の診断を受ける方がベター。とくに1~6の場合は症状が進行している可能性があるので、できるだけ早く病院へ行きましょう。
「慢性腎臓病」は常にストレスにさらされ、食生活も乱れがちな現代人なら誰しも罹患するリスクがある新たな「国民病」です。セルフチェックをできるだけ毎日行い、早期発見につとめましょう!
■「有酸素運動」と「筋肉運動」の組み合わせが◎!毎日やらなくてもOK
「慢性腎臓病」は進行し、症状が出てしまうと完治が難しかったり、治癒までにかなりの時間を要することがあるので「かからない!自覚症状のない方は悪化させない」ための対策を始めることが大切です。そこで今すぐ実践することができる「具体的な対策法」をご紹介!
具体的には
1.1日3回、バランスの良い食生活を心がけ、
食べ過ぎには注意する
2.塩分を摂り過ぎない
3.適度な運動を心がける
4.ストレスを溜めないよう、適度な休息、
良質な睡眠を心がける
5.喫煙者の方はできるだけ喫煙を控えるように
心がける
を実践していきましょう。
やはり大切なのは「食生活」。「慢性腎臓病」対策の場合、とくに「食べ過ぎによる肥満」と「塩分の摂り過ぎ」には注意を!「慢性腎臓病」はメタボリックシンドロームなど肥満気味な方の発症リスクが高いことがわかっているので、暴飲暴食は控え、「1日3回、バランスの良い」食生活を意識すると良いでしょう。
また「塩分」の摂り過ぎは腎機能が低下するため、できれば1日あたりの塩分摂取量は男性8グラム未満、女性7グラム未満に留めるのが理想ですが、ふだんの食生活で細かく管理することはとても難しいので、「麺類の汁は飲み干さない」「調理をする際は野菜を多く入れ、野菜の旨味で塩分を減らす」「レモンやお酢の酸味を利用して塩分を控えめにする」「ソースや醤油は食材にかけるのではなく小皿に入れてつける」「テーブルに塩やソース、醤油などの調味料を置かない」など毎日できる範囲で工夫をしていきましょう!
3の「運動」についてはウォーキングや軽いジョギング、サイクリングなど「有酸素運動」とスクワットや腕立てなど「筋肉(レジスタンス)運動」を併用すると良いとされています。
有酸素運動は20分~30分程度、「息切れしない程度の強度」で週に3~4日くらい。「筋肉運動」もスクワットなど激しめのものであれば1日おきで。スクワットなどができないという方は
・イスや手すりなどにつかまり、
片方の足を前の方に5センチほど上げ
その状態で1分間静止する
・反対側の足も同様に行う
これを1セットとし、
朝昼晩など1日3セットやるとベター。
を実践するだけでもOK。運動する際に無理は禁物!息が切れるなどツラい場合はすぐに中止を。
運動をする前には軽く準備運動もして、体に過剰な負担をかけないようにしましょう。
また「ストレス」も「慢性腎臓病」の原因と言われているので、趣味でリフレッシュしたり、休息・睡眠時間を多く取るようにするとGOOD。
5の喫煙については「慢性腎臓病」の発症リスクを高め、進行を早めると考えられているため、できるだけ控える方が良いですが、自己流でいきなり禁煙をするとかえって「ストレス」が溜まったり、反動で以前より多く吸ってしまうこともあるので、少しづつ減らしていくか、医師に相談すると良いでしょう。
「慢性腎臓病」は「食生活の乱れ」も原因の一つと言われているため、「食事」に気をつけることが重要ですが、「慢性腎臓病」になってしまうと、進行の度合いによっては適切な食事療法を実践しなければならないので、医師の指導が必要です。「病気にならないよう」塩分はできるだけ控えるなど、腎臓に負担をかける食材はできるだけ摂らないといった配慮も◎ですが、「腎臓に負担をかける」と言われている「たんぱく質」は私たちにとって体を動かす重要なエネルギー源でもあるので、適度に摂ることが大切。
「たんぱく質」には肉や魚、卵、牛乳などに含まれる動物性と穀物や野菜、果物などに含まれる植物性がありますが、「腎臓」に負担をかけにくいと言われているのが、私たちの体の組成に近く、良質なたんぱく質とも呼ばれる「動物性」。動物性たんぱく質はそのほとんどが筋肉や血液に使われるため、腎臓に負担をかける「尿素窒素(毒素)」が出にくいと言われています。
肉や魚、卵など動物性たんぱく質を適度に摂りいれることは◎ですが、なかでも豚ばら肉は豚ロースなどに比べ、高エネルギーでありながら、たんぱく質の量が少ないため、腎臓への負担に配慮しながら栄養も摂りたいという方におすすめ。「病気になりたくないから!」といって自己流で何でも制限してしまうと栄養不足になり、かえって他の病気を発症することも。
「食べ過ぎ」はいけませんが、「たんぱく質」不足はシニア世代、とくに女性の間で問題となっているので、食材を上手に選びながら、ケアをしていきましょう!
さて、ここでクエスチョン!
新たな国民病と言われる「慢性腎臓病」。胃腸や肝臓と比べると、あまりその働きが注目されることはありませんが、「腎臓」について述べたもので正しいものはどれでしょうか?
〈1〉「腎臓」は2つあるが、左右どちらも同じ位置にある
〈2〉「腎臓」は2つあるが、右の「腎臓」の方が低い位置にある
〈3〉「腎臓」は2つあるが、左の「腎臓」の方が低い位置にある
「腎臓」は体の腰より少し上の位置の背中側、背骨を挟み左右1個ずつあります。
右側は右腎、左側は左腎と呼ばれ、この2つの働きで「老廃物を排出する」など、私たちの生命活動を支えてくれています。
左右対称なイメージがありますが、実は右の腎臓(右腎)は肝臓がすぐ上にあるので、押し下げられて、左の腎臓よりも少し低い位置にあると言われています。形はソラマメに似ていて、大きさはそれぞれ大人のこぶし大ほど(直径10~11センチ、幅5~6センチ、厚さは3~5センチ)。
重さは120~150グラム、お茶碗1杯分程度だそう。胃腸に比べ、小さいだけでなく「沈黙の臓器」と呼ばれるほど「症状がでにくい」臓器のため、毎年の健康診断などでわずかな変化も見逃さず、対策をすることが大切です。