健康食材&レシピ

体脂肪の燃焼や血行促進などの働きが知られ、「ダイエットに効果的」と言われる唐辛子。古くから薬としても使われた唐辛子のもつ健康効果について、考えてみましょう。

イラスト=神蔵孝思 取材=弘中ミエ子

世界中で愛される辛みの香辛料

唐辛子には数百を超える品種があると言われ、世界中で辛みのスパイスとして利用されています。日本へは16世紀後半にポルトガルから長崎に伝来したという説が有力で、完熟したものを加熱または乾燥させて使う赤唐辛子と、未熟果を生のまま食す青唐辛子が特によく知られます。辛み成分のカプサイシンは、エネルギー代謝を促し体脂肪の蓄積を抑制する働きがあるとして、注目されています。

代謝をアップさせるダイエットの味方!青唐辛子/赤唐辛子

鷹の爪

体脂肪を燃焼させる カプサイシン

辛み成分のカプサイシンはエネルギー代謝に関わるホルモンの分泌を促進し、脂肪を燃焼しやすくします。加えて、体温が上昇し血管が拡張することで血流改善も期待できます。
ただし、過剰に摂取すると胃腸の粘膜を傷つけてお腹をこわしたり、心臓に負担をかけたりすることもあるので注意が必要です。

美肌にも貢献する ビタミンE

唐辛子に多く含まれるビタミンEは強い抗酸化作用をもち、活性酸素を抑制することで動脈硬化など生活習慣病の予防に役立つとされています。シミやシワを抑制し、毛細血管を拡張させ血行を改善。ビタミンEは脂溶性なので、油と一緒に摂るのがおすすめです。

脂質代謝に関わる ビタミンB6

ビタミンB6はアミノ酸代謝やアミノ酸再合成、脂質代謝に関わるビタミンですから、ダイエットには欠かせません。乾燥唐辛子のビタミンB6含有量は野菜の中でトップレベルですが、一度に大量摂取することは避け、料理に辛みをプラスするような利用法が良いでしょう。

生活習慣病予防に! β-カロテン

β-カロテンは体内でビタミンAに変換され、目の機能、皮膚や髪の健康を保つ働きをします。また、ビタミンAに変換されなかったβ-カロテンは抗酸化物質の役目を果たし、生活習慣病予防や老化防止に有効と言われています。

美肌効果もある ビタミンC

乾燥した唐辛子にはあまり含まれませんが、生の唐辛子にはビタミンCが多く含まれています。ビタミンCはコラーゲンの合成に関わり、シミやくすみを防ぐ美肌効果で知られています。また、活性酸素を減らす抗酸化作用があり、ストレスから体を守る働きをします。

唐辛子の雑学

□唐辛子の辛味の単位は?

唐辛子の辛さの単位は「スコヴィル値(SHU)」で表します。これは、1912年に味覚テストを考案した化学者、ウィルバー・スコヴィル氏の名前から取られたもの。例えば、鷹の爪は4万〜5万SHU、激辛で知られるハバネロは10万〜35万SHUです。

□「鷹」の付く品種が多い

空に向かって伸びる姿が似ていることから「鷹の爪」と呼ばれるようになったとされる赤唐辛子。サヤの長さが5センチもある大型の品種「本鷹」や、深紅色で辛みが非常に強い「熊鷹」など、主な品種には「鷹」の付くものが多く見られます。

□全国にある辛味調味料

越後特産【かんずり】
唐辛子を雪にさらし、塩と麹と天然香料(柚子など)を加え、数年かけて貯蔵発酵させたもの。

九州特産【柚子胡椒】
柚子と青唐辛子をすりつぶして混ぜ合わせ、食塩を加えて作られます。

沖縄特産【コーレーグース】
島唐辛子を泡盛につけ込んで作られる、沖縄のタバスコとも言われる調味料。ちょい足し調味料の定番です。

「唐辛子」レシピ

代謝をアップさせるカプサイシンが豊富で独特の辛みはもちろん、色鮮やかな見た目で食欲も刺激してくれる、唐辛子を使った料理を2品作っていただきました。

簡単・時短の料理

代謝アップに効果がある唐辛子のカプサイシンは、脂溶性なので油調理にうってつけ。ラー油を手作りすると聞くと難しそうに感じますが、材料が多いだけで作り方はいたってシンプル。白いご飯にのせるほか、卵かけご飯の調味料や、野菜スティックのディップ、肉料理のトッピングなどにも大活躍しますよ。

ナッツいっぱい!食べるラー油

カプサイシンの効果で代謝をアップ。コレステロール値を下げるナッツ類を加えることで、さらにヘルシーな働きが期待できる一品です。

[材料(2人分)]

なたね油100mL/ごま油50mL/ニンニク3片/長ねぎ1/3本/ショウガ30g/粗挽き唐辛子大さじ1(辛くしたい場合は粉唐辛子を大さじ1追加)/干しエビ10g(桜エビ10gでも可)/すり白ごま大さじ1/ミックスナッツ(無塩)30g
調味料:鶏がらスープの素小さじ1/砂糖小さじ2/しょう油・味噌・オイスターソース各小さじ1/塩小さじ1/4

STEP1

フライパンになたね油を入れて火をつけ、みじん切りにした長ねぎ、ショウガ、ニンニクと、粗く刻んだ干しエビを入れ中火にする。グツグツと煮立ったら弱火にして、材料が色づくまでかき混ぜながら10分程度加熱。

STEP2

火を止めて粗熱を取ってから、ごま油、粗挽き唐辛子を加え、調味料を加えて混ぜ合わせる。全体がなじんだら、すり白ごまとミックスナッツを加えて混ぜ合わせる。

STEP3

冷めたら保存容器に入れる。あればフライドオニオン20gを入れると、さらにザクザク感がアップします。

こだわりの料理

鍋料理が多くなるシーズン到来。同じ材料でもスープを変えることで、いつもと違った料理になります。唐辛子の辛みと中華スパイスの八角の香りを利かせた鍋料理でアジアンテイストを楽しみましょう。食材はお好みで鶏肉でもいいですし、野菜をニラや水菜に代えても良いでしょう。カプサイシンの働きで体の中から温まる一品です。

辛さを楽しむ麻辣火鍋

唐辛子の辛い部分は種ではなく、主に隔壁(仕切り部分)と胎座(種に接するワタ部分)。唐辛子を縦に切ると辛い部分を取りやすくなります。もちろん、辛いものが好きな方はまるごと使っても良いでしょう。

[材料(2人分)]

豚肩ロース薄切り肉200g/木綿豆腐1/2丁/白菜3~4枚/豆苗1袋/長ねぎ1本/キクラゲ(乾燥)4g/エノキダケ1/2袋/赤唐辛子3~4本/ショウガ1かけ/ニンニク1片/豆板醤小さじ1/ごま油大さじ1
スープ用:水600mL/紹興酒大さじ3/鶏がらスープの素小さじ1/みりん・オイスターソース各小さじ2/味噌大さじ2~3/八角1個/シナモンスティック1本(なくても可)

STEP1

白菜は軸の部分は横1㎝幅に切り、葉はざく切りに。豆苗は半分の長さに切り、長ねぎは斜め薄切りにする。豆腐は4~6等分に切り、キクラゲは水に漬けて戻した後、食べやすい大きさに切る。

STEP2

赤唐辛子は縦半分に切って種を取り、ショウガはせん切り、ニンニクは半分に切る。

STEP3

鍋にごま油と豆板醤を入れて炒め、香りが立ったらショウガ、ニンニク、2つに折ったシナモンスティック、八角、赤唐辛子を加えてさっと炒める。分量の水と紹興酒、鶏がらスープの素、みりん、オイスターソース、白菜の芯を加えて中火で煮立てる。

STEP3

長ねぎ、キクラゲ、エノキダケを入れ、再度煮立ったら、豆腐を加え、豚肉を広げながら入れる。アクを取りながら食材に火が通るまで7~8分煮てから一旦火を止め、味噌を溶き入れる。再び加熱し白菜の葉の部分、豆苗を加えて2分ほど煮て仕上げる。

ひと言アドバイス

唐辛子の辛みは単なる刺激ではなく、風味を変え食欲をそそるためのアクセントです。韓国産唐辛子やハラペーニョなど、辛みの異なる唐辛子を使い分けることで、好みの辛さを見つける楽しみもありますよ。

金丸 絵里加さん

フードコーディネーター、管理栄養士、料理研究家。女子栄養大学にて非常勤講師。テレビ出演、雑誌での取材、書籍の出版、旅館やレストランのメニューコンサルティングでも活躍。

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