冷房をすぐ使う派?それとも、使わない派?
年々厳しさを増す日本の夏の暑さ。地域によっては、冷房なしには過ごせない猛暑日が増えています。熱中症対策にも冷房は欠かせません。しかし一方で「冷房が苦手」という人も多く、冷房を使うか使わないかで家族の意見が分かれることもあるようです。
そもそも体感温度には個人差があり、性別や年齢によっても異なります。女性や年齢の高い人が冷えを感じやすいのは、筋肉量が少なく体内で発生する熱量が少ないためです。
快適を生むための冷房が不調や不快の原因になっては意味がありません。そこで、冷房との上手な付き合い方を考えてみましょう。
カラダの「冷え」は3段階あります
冷房を使う時にもっとも気をつけたいのは、カラダを冷やしすぎないことです。夏でも「冷え性」に悩まされる人が後を絶ちません。冷え性には、手足の冷え→内臓の冷え→カラダ全体の冷え、という3段階があります。
カラダは自律神経の働きによって体内の環境を常に一定に保とうとしますが、寒すぎると全身の体温をキープできなくなります。すると、生命維持のためにカラダの中心部への血流を優先します。そのため手足などの末端から冷えはじめるのです。
冷えが進み、内臓の冷えになると胃腸系、泌尿器系、婦人科系の症状が出はじめます。カラダ全体の冷えになると、倦怠感、めまい、ふらつき、頭痛、不眠、イライラ、精神不安など心身ともに様々な症状が現れます。冷えを侮ってはいけません。
設定温度を高めにして「寒暖差疲労」を防ぐ
また近年、夏バテの原因として注目されているのが「寒暖差疲労」です。たとえば夏のランチタイム。冷房の効いた部屋を出て、蒸しかえる暑さの中を歩いてお店へ。快適な空間でしばらく過ごして、再び灼熱の街へ…。このように短時間で暑い・寒いを行ったり来たりすると、カラダでは体温を一定に保とうとする自律神経が大忙しに。これが心身を疲れさせてしまいます。
外の気温はコントロールできませんが、冷房の設定温度は調節できます。室内を冷やしすぎないことで寒暖差を少なくする。これも冷房との上手な付き合い方のひとつです。
冷房の上手な使い方
快適な夏を過ごすための冷房の使い方や付き合い方を、具体的にみていきましょう。
設定温度を下げすぎない
冷房の標準的な設定温度は「25~28度」。外気温からマイナス3~4度が目安です。
湿度もコントロールする
高めの温度設定でも湿度を下げることで快適になります。除湿モードや除湿機を上手に取り入れましょう。
寒がりの人に合わせる
同じ空間に暑がりの人と寒がりの人がいる場合は、寒がりの人に合わせた温度設定にしてください。寒い人が着込むのではなく、暑い人が扇風機やサーキュレーターなどを利用しましょう。風があたることで涼しさが増します。
就寝時を快適にする
睡眠不足は夏バテの原因になります。寝苦しい夜は冷房を上手に使って快適な就寝環境をつくりましょう。眠りにも個人差があり、一晩中つけっぱなしにした方が熟睡できるという人もいます(ただし、冷えやすい人や寒暖差疲労を感じている人にはおすすめしません)。以下のパターンを試して自分に合う環境を探してみてください。
- 1:設定温度を28度以上にして一晩中つけっぱなしにする。
- 2:タイマーを使って眠りはじめの3時間だけつける。
- 3:寝る前に部屋を冷やしておいて寝る時は消す。
- 4:つけたり消したりする。
猛暑の時はためらわずに使う
高温・高湿になると熱中症の危険が増します。2018年の5~9月に全国で熱中症により搬送された人は95,000人以上にのぼります。高齢者や幼い子供、体調が弱っている人などは熱中症を防ぐために、ためらわず冷房を使うことも必要です。
冷房はまったく使わないのではなく、冷やしすぎに気をつけながら上手に使う。これが長くて暑い夏を快適に過ごすコツです。
久手堅 司 医師
せたがや内科・神経内科クリニック(二子玉川)院長。日本神経学会神経内科専門医、日本頭痛学会頭痛専門医。東邦大学付属医療センター大森病院、横浜市東部病院を経て現職。内科・神経内科・小児科のほか、自律神経失調症外来、頭痛外来、肩こり・首こり外来、気象病外来、寒暖差疲労外来などの特殊外来を開設。著書に『最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方』クロスメディアパブリッシング出版(2018)。
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