ビューティー&ヘルスケア特集 Vol.36いいオイルで健康に!〜正しい油の選び方・使い方〜ビューティー&ヘルスケア特集 Vol.36いいオイルで健康に!〜正しい油の選び方・使い方〜

個性豊かなオイルの世界

オリーブオイル、ごま油、サラダオイル…みなさんの台所にはどんなオイルがありますか?スーパーマーケットのオイルの棚にはたくさんの種類が並び、今やオイルは、味や風味、栄養成分などさまざまな視点で選べるようになりました。
そんなバラエティに富むオイルの世界ですが、誤解や勘違いも多く、せっかくの栄養素を台無しにしてしまうこともあるようです。そこで、健康にいい植物オイルの選び方や使い方を、オイルコンシェルジュの先生に教えてもらいました。

健康なカラダに欠かせない存在です

オイル(脂質)は栄養学的にとても優秀です。5大栄養素のなかで唯一、「栄養」の3大定義である、①エネルギーになる、②カラダをつくる、③カラダの調子をととのえる、のすべてを満たしています。ホルモンの原料となったり、ビタミンの吸収を促したり、冷えからカラダを守ったり。カラダをつくる約37兆個の細胞をコーティングしている細胞膜も脂質です。オイルは生命維持に欠かせないといっても過言ではありません。

知っていますか?ちょっと意外なオイルの基礎知識

オリーブオイル、ごま油、アマニオイル、ココナッツオイル。最もカロリーの低いオイルはどれだと思いますか?

じつはどの植物オイルもカロリーはすべて同じ9kcal/gです。そして、どの植物オイルにもコレステロールは含まれません。「コレステロールゼロ」は、植物性オイルであれば当然のことです。

大正時代に日本で誕生したオイルを知っていますか?

サラダオイルです。オイルは腐りませんが、熱・空気・光によって酸化すると劣化します。この、オイルの宿敵である熱・空気・光に強いクッキングオイルを作ろうと人工的に開発されたのが、日本独自の混合食用油サラダオイルです。便利な面もありますが、動脈硬化の原因となる「トランス脂肪酸」を含むため、健康のためには避けたいオイルです。

オイルはそもそも何でできているのでしょう?

主成分は、炭素・酸素・水素が結びついた「脂肪酸」です。炭素・酸素・水素の結びつきや状態により、脂肪酸は下の表のように分類されます。オイルはひとつの脂肪酸だけでできているわけではありません。オイルによって脂肪酸の種類やバランスが異なり、それが個性となります。例えば、オリーブオイルは「オメガ9系(オレイン酸)」が最も多く、「オメガ6系(リノール酸)」や「飽和脂肪酸」なども含んでいます。

オイルの基礎知識

オイルの基礎知識

積極的に摂りたいオイルは「オメガ3系」

近年、注目されているのが「オメガ3系(α-リノレン酸など)」と「オメガ6系(リノール酸など)」のオイルです。先ほどの分類表の左下にある2つです。ともに免疫作用に関わる脂肪酸で、オメガ6系が炎症性、オメガ3系が抗炎症性の性質をもっています。この2つがバランスよく働くことで健康維持に役立ちます。

どちらも体内で作ることができない「必須脂肪酸」で、食べて摂取するしかありません。オメガ6系は大豆などの食材や数多くのオイルに含まれているため過剰摂取の人が多いですが、オメガ3系は魚と一部のオイルにしか含まれておらず、現代人の食生活では慢性的に不足しています。

そのため、私たちが積極的に摂りたいのは「オメガ3系」のオイルです。オメガ3系を主成分にもつ代表的な植物オイルは、アマニオイル、エゴマオイル、チアシードオイル、カメリナオイル、サチャインチオイルの5種類です。「オメガ3系」のオイルはデリケートなため扱いには注意が必要です。

オイルを上手に使う2つのポイント

オイルは栄養成分、味や風味も大切ですが、それらを生かすための保存や調理のコツを知っておかねばなりません。ポイントは「酸化させない」「加熱しすぎない」です。

酸化する前に1〜2ヶ月で使い切る

どんなに栄養価の高いオイルも、酸化が進むとカラダに有害な過酸化脂肪酸やトランス脂肪酸が発生してしまいます。最善策は、酸化しないうちに使い切ることです。理想は1ヶ月以内、長くても2ヶ月以内には使い切りましょう。
熱・空気・光を避けた冷暗所での常温保存が基本ですが、酸化しやすい「オメガ3系」は冷蔵庫で保管してください。また、揚げものに使った油はもったいなくても2度使いせず捨てましょう。漉しても酸化は止まりません。

「アンダー100℃」で煮る・蒸す・茹でる

オリーブオイルは210℃、ごま油は150℃など、オイルにはそれぞれに臨界温度があり、それを超えると有害なトランス脂肪酸が発生してしまいます。しかし調理中のフライパンやお鍋の中が何℃なのかは、なかなかわかりません。そこで、おすすめしたい調理法は、煮る・蒸す・茹でる、です。水分と一緒に調理していれば100℃を超えることはまずありません。もし、揚げる・炒めるなどで高温調理する場合は短時間で仕上げましょう。
なお、アマニオイルやエゴマオイルなど、とびきり熱に弱い「オメガ3系」はドレッシングにしたり、パンにつけたり非加熱で食べてください。「オメガ9系」のオリーブオイルも生がおすすめです。こめ油、ココナッツオイルなどは加熱にも向いています。

主なオイル成分

主なオイル成分

オイルは「質」
お気に入りの1種類を続けてみましょう

オイルの世界では近年「リポクオリティ(脂質の質)」が注目され、量より質で選ぶ時代を迎えています。オイルはただの潤滑油ではなく、大切な食材のひとつです。まずは気になる1種類を手に入れて味わってみてください。低温圧搾のものを選ぶと、オイルの風味や味わい、色などの個性をより楽しめます。
そしてお好みのオイルに出会えたら、その1本を使い続けてみてください。継続してこそカラダにも作用します。続けるための原動力は「おいしい」や「楽しい」という純粋な喜びです。

なお、どんなにいい栄養成分もおいしい食材も「過ぎれば毒」となります。オイルの摂取目安量は、体重50kgの成人女性なら1日あたり約50gです。食事などから摂れる脂質もあるので、純粋にオイルだけで摂る量は1日スプーン大さじ1〜2杯(15〜30g)と覚えておいてください。

YUKIEさん

YUKIEさん

美容オイルコンシェルジュ・日本オイル美容協会代表。アメリカでオイル学を学び、帰国後、プレミアムオイル国際見本市「OIL in LIFE」、体験型オイルショップ「オイル・ファーマシー」などを開く。オイルソムリエ育成にも力を注ぐ。著書に『読むオイル事典』『オイルの教科書』。

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